夜の街で
友人の待ち時間で夜の街に1人。
アコースティックギターの音が爽やかに突き抜け、酔いつぶれの叫ぶ声から守ってくれるように切なくかすれた声が耳に入る。
周りには酒を飲んで潰れた女子大学生とそれをデレデレしながら介抱する男子大学生。そんなしょうもない光景に辟易していたところに、突然あらわれた。
演奏している横に書かれたTwitterアカウントに飛ぶと、イーグルスのベスト盤をリツイートしていた。最近、喫茶店で流れていた渋くてかっこいいと思って探した音楽だ。こんな所でリンクするのかと驚きながらもニヤける。
ギターケースにコインを入れるのは、黒人の男性と白髪が目立つようになったおばあちゃん。共通しているのは、人が全身で表現していることにお金が払える心の余裕だろうか。これまで僕がしてこなかった行為だ。
だが、それも今日で終わろうとしている。初めて路上ライブでCDが欲しくなったのだ。遠目から目を凝らす。1000円。
メジャーデビューしているあのアーティストなんて3000円で売っているのに、こんなにも魂がこもった音楽が、1000円。
つくづく芸術っていうものはお金で判断出来ないなと感じる。少なくとも、僕にとってホイップクリームの沢山のったパンケーキより安いなんて信じられなかった。
友人のもうすぐ着くというLINE。このライブを見れるのもあと数分か。
友人も気に入ってくれるといいな。家で一緒に聴こうぜ、たった今お前を待っている間に最高のアーティストを見つけたんだ。
友人とお酒を酌み交わしながら流れる音楽には値段なんてつけられない。本当に最高の夜だった。
路上アーティストを笑う奴に、一生分からない、最高の夜。